あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
『コリーン。君は聖女様の友達なのだろう? だったら、聖女様と仲良くして、周囲の者によい印象を与えたほうがいい』
『どういうこと?』
『未来の王太子妃にはなれなくても、未来の公爵夫人にはなれるかもしれない。そういうことだ』
 そこでやっと、彼女は爪を噛むのをやめた。ヘンリーの言葉を理解したようだ。
『わかったわ……。ウリヤナは私の友達だったんですもの。ウリヤナだって、慣れない王城は寂しいわよね』
『そういうことだ』
 ヘンリーの言葉を聞いて、コリーンは微かに微笑んだ。

 数日後、王太子クロヴィスと聖女の婚約が正式に発表された。
 聖女は神殿で生活をしているが、クロヴィスの婚約者として王城に足を運ぶことも増えた。
 そんなときは、コリーンが彼女と一緒にお茶を飲みながら、話に花を咲かせることもある。
 コリーンと聖女の関係は、可もなく不可もなく。まるで学院時代の友人に戻ったようだとも、コリーンは言っていた。
 それにコリーンは、王城で好ましい男性を見つけたらしい。
 相手は公爵家の嫡男で、ヘンリーもよく知っている人物だった。きっとあの相手なら、父親も反対しないだろう。むしろ、諸手を挙げて喜ぶかもしれない。よくやったと、コリーンを褒め称えるだろう。
 だが、一つが上手くいくと、一つがダメになるのはなぜなのだろう。
 ここのところ、王太子クロヴィスにはよくない噂がまとわりついていた。社交の場に、聖女ではない別の女性を連れだって参加している、とのこと。
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