あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
これが議会で認められれば、お互いの手元に婚約解消通知書が届く。それが二人の婚約が解消された証になる。
「そうそう、ウリヤナ。私の新しい相手を紹介しよう。そうすれば、君も自分の気持ちに正直になれるのではないか?」
この男はとことんウリヤナとの関係を断ち切りたいらしい。
むしろ、まだウリヤナがクロヴィスに未練があるとでも思っているのか。それほどまで自惚れているのだろうか。
興味ありませんと声に出せたらどれほど楽だろう。だが、その言葉すら飲み込む。それが、ここでうまくやっていく方法なのだ。
彼に歯向かって機嫌を損ねられたら、婚約解消だけではすまない。今まで我慢してきたこと、すべてが水の泡となって消えていく。
「コリーン。ここに来てくれ」
彼が口にした名は、ウリヤナもよく知っている。
コリーン・エイムズ、エイムズ子爵令嬢。同い年である彼女とは、学院で知り合い、何度も一緒に茶を飲んだ仲である。社交界デビューする前から、親しくしていた友人のうちの一人だ。
ウリヤナが聖女として神殿へ行かねばならないことを知って、たくさんの涙をこぼしながらも励ましてくれたのが彼女だった。
さらにウリヤナがクロヴィスの婚約者となり、王城を訪れる機会が増えてからは、コリーンと会っておしゃべりをする場を設けることも可能となった。
それは高貴なる生まれの子女は、王城務めを通して縁を作るからだ。将来の伴侶を探すための務めといっても過言ではない。彼女もまた、王城で侍女として務めていた。
コリーンは、以前と変わらぬ屈託のない笑顔で、ウリヤナを励ましてくれていたのだ。
とはいえ、ウリヤナの友人でもあるコリーンの名をなぜ彼が呼ぶのか。
「待ちくたびれましたわぁ、クロヴィス殿下」
隣の控えの間と続く扉から姿を現したのは、やはりウリヤナも知っているコリーンであった。だが、それはウリヤナの友人である彼女とはどことなく雰囲気が違う。
いつもの彼女は、派手な装いを好まずどこか控えめなドレスを着ていた。それでも身に着けた教養は身体の中から滲み出ているような清楚な女性であった。
「そうそう、ウリヤナ。私の新しい相手を紹介しよう。そうすれば、君も自分の気持ちに正直になれるのではないか?」
この男はとことんウリヤナとの関係を断ち切りたいらしい。
むしろ、まだウリヤナがクロヴィスに未練があるとでも思っているのか。それほどまで自惚れているのだろうか。
興味ありませんと声に出せたらどれほど楽だろう。だが、その言葉すら飲み込む。それが、ここでうまくやっていく方法なのだ。
彼に歯向かって機嫌を損ねられたら、婚約解消だけではすまない。今まで我慢してきたこと、すべてが水の泡となって消えていく。
「コリーン。ここに来てくれ」
彼が口にした名は、ウリヤナもよく知っている。
コリーン・エイムズ、エイムズ子爵令嬢。同い年である彼女とは、学院で知り合い、何度も一緒に茶を飲んだ仲である。社交界デビューする前から、親しくしていた友人のうちの一人だ。
ウリヤナが聖女として神殿へ行かねばならないことを知って、たくさんの涙をこぼしながらも励ましてくれたのが彼女だった。
さらにウリヤナがクロヴィスの婚約者となり、王城を訪れる機会が増えてからは、コリーンと会っておしゃべりをする場を設けることも可能となった。
それは高貴なる生まれの子女は、王城務めを通して縁を作るからだ。将来の伴侶を探すための務めといっても過言ではない。彼女もまた、王城で侍女として務めていた。
コリーンは、以前と変わらぬ屈託のない笑顔で、ウリヤナを励ましてくれていたのだ。
とはいえ、ウリヤナの友人でもあるコリーンの名をなぜ彼が呼ぶのか。
「待ちくたびれましたわぁ、クロヴィス殿下」
隣の控えの間と続く扉から姿を現したのは、やはりウリヤナも知っているコリーンであった。だが、それはウリヤナの友人である彼女とはどことなく雰囲気が違う。
いつもの彼女は、派手な装いを好まずどこか控えめなドレスを着ていた。それでも身に着けた教養は身体の中から滲み出ているような清楚な女性であった。