あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
やはり彼女は、間違いなく聖女であった。
彼女の噂が耳に届くたびに、クロヴィスの顔が曇っていくことに、もちろん気がついていた。だからデイヴィスは、家族団らんとも呼べる食事の時間に、わざと明るい口調で聖女の話題を出す。
王妃はニコニコとして話を聞いているが、クロヴィスは黙々と手を動かすのみ。
「クロヴィスよ。聖女殿はどうだ?」
デイヴィスの言葉に、クロヴィスがピクっと身体を震わせた。手にしていたカトラリーを置き、口元を拭う。
「何が、でしょうか?」
王族の証である金色の瞳で、真っすぐに見つめてきた。
「お前の、相手だよ。未来の王太子妃だ」
「まぁ。素敵ですわね」
王妃は朗らかな声をあげる。
「クロヴィスと聖女様。よろしいのではなくて?」
「まあまあ、そう急かすな」
まだ何も決まっていないというのに、勝手に想像しては勝手にうっとりとしている王妃に声をかけてから、息子のクロヴィスに視線を向けた。
「悪い話ではないだろう? あのときは認められなかったが、今なら認めてやる」
その言葉にクロヴィスの金色の目が細くなる。
クロヴィスは一年前にも、自分の婚約者としてウリヤナ・カールを望んだ。それを勝手にカール子爵家に打診していたのだから、周囲の者は驚いた。
彼女の噂が耳に届くたびに、クロヴィスの顔が曇っていくことに、もちろん気がついていた。だからデイヴィスは、家族団らんとも呼べる食事の時間に、わざと明るい口調で聖女の話題を出す。
王妃はニコニコとして話を聞いているが、クロヴィスは黙々と手を動かすのみ。
「クロヴィスよ。聖女殿はどうだ?」
デイヴィスの言葉に、クロヴィスがピクっと身体を震わせた。手にしていたカトラリーを置き、口元を拭う。
「何が、でしょうか?」
王族の証である金色の瞳で、真っすぐに見つめてきた。
「お前の、相手だよ。未来の王太子妃だ」
「まぁ。素敵ですわね」
王妃は朗らかな声をあげる。
「クロヴィスと聖女様。よろしいのではなくて?」
「まあまあ、そう急かすな」
まだ何も決まっていないというのに、勝手に想像しては勝手にうっとりとしている王妃に声をかけてから、息子のクロヴィスに視線を向けた。
「悪い話ではないだろう? あのときは認められなかったが、今なら認めてやる」
その言葉にクロヴィスの金色の目が細くなる。
クロヴィスは一年前にも、自分の婚約者としてウリヤナ・カールを望んだ。それを勝手にカール子爵家に打診していたのだから、周囲の者は驚いた。