あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 クロヴィスには聖女に手紙を書くようにと伝えた。頻度は月に一度でかまわない。近況を尋ねるような当たり障りのない内容にとどめておくこと。
 聖女が聖女としての責務に集中できるように、むしろクロヴィスの手紙が息抜きになるような体裁を整えろと。
 クロヴィスが二通目の手紙を送った後、聖女から返事が届いた。
 返事が遅れたのは、地方に足を運んでいたためとのことだった。その話は、もちろん国王の耳にも届いているし、クロヴィスだって知っていた。
 それでも遅れた理由を説明したうえで謝罪をし、手紙の御礼が書かれていた。
 その返事を、クロヴィスは何度も読み返していたようだ。
 ぎこちない二人の文通は、半年ほど続いた。といってもお互いに月に一度しか手紙を出さない。そのやり取りだってほんの数回。
 そして、聖女が聖女となって一年経ったあの日、王太子クロヴィスと聖女の婚約を正式に発表した。それによって、国中が歓喜に包まれた。
 聖女は、神殿での務めの合間をぬって、王城へと足を運ぶ。そうやってクロヴィスと共に時間を過ごすことで、二人の距離を縮めるのが目的である。
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