あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
13.彼女たちが微笑ましい日
 まさかあのレナートが結婚して戻ってくるとは、思ってもいなかった。
 というのが、ウリヤナを連れてローレムバに戻ってきた彼が、彼女を紹介したときの周囲の反応だった。
 レナートと共にイングラム国を訪れていたロイだって、そう思った。
 いや、一番驚いたのは、ローレムバ国に戻る途中の宿に、気を失った彼女を連れてきたときだ。
『こちらの女性は?』
 そう尋ねたのに、返ってきた言葉は『少し治療する必要がある』
 ロイが聞きたかったのは、そういうことではない。
 どこの誰を連れてきたのか。彼女とはどういう関係なのか。何が起こったのか。
 むしろ、それのどれかを知りたかった。なのに、ロイの期待を外した言葉が返ってきた。
『承知しました』
 彼が連れて来た女性が誰なのかはよくわからないが、怪我をしている。その治療をしたいと言ったのだから、それなりに入用となるものを準備するのがロイの仕事である。
 勝手な想像となるが、彼女は先ほどの爆発事故に巻き込まれたのだろう。
 その彼女をレナートが連れてきた。だけど、理由はわからない。
 とにかくレナートという男は、言葉が足りない。もしくは思ったことをずかずかと言い過ぎる。
 彼自身は、相手の魔力の以後気を見て察するところがあるようで、言葉がなくても通じるものがあるらしい。そんなことができるのは、レナートくらいしかいない。
 彼女の怪我を治療したあと、ロイはいくつかレナートに尋ねた。尋ねないと、彼は教えてくれないからだ。
< 122 / 177 >

この作品をシェア

pagetop