あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
『ですが、レナート様が彼女の子の父親になった場合、ウリヤナ様とは夫婦という形になるのが自然かと思いますが、そこはどうお考えですか?』
『夫婦……』
『そうです。つまり、ウリヤナ様とご結婚される気があるということですよね?』
『そ、それは……』
 こんなレナートを初めて見た。
『わかりました、わかりました。それ以上はもういいです』
 見ているこっちのほうが恥ずかしい。
 道中、ロイはそれとなくウリヤナを観察した。それはもちろん、レナートの相手として相応しい女性であるかどうかを見極めるためである。
 だが、それをすぐにやめた。ウリヤナもレナートにまんざらではないらしい。
 人を好きになるのは、きっかけが大事なのかもしれない。そしてレナートはそのきっかけに気づいていない。だから、見ているこっちのほうが恥ずかしいのだ。
 ローレムバ国への入国手続きにあたって、少々面倒くさいのがウリヤナの存在であった。彼女がイングラム国の人間であるからだ。
『ウリヤナ様が、前もってレナート様と婚姻関係があれば、手続きも楽になるんですけどねぇ』
 それとなく、レナートの前でぼやいてみた。その結果が、あれだった。
 そしてザフロス伯邸に戻ってきた途端、彼はウリヤナと結婚したと報告したのだ。
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