あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 悪阻の原因もレナートが注ぐ魔力にあったらしい。加減のわからなかったレナートが魔力を注ぎすぎたため、それが悪阻を悪化させた。それに気がついたのも、出産経験のある侍女頭であり、彼はこっぴどく叱られたようだ。
 しゅんとしたレナートがなぜか可愛いと思えてしまったし、彼なりに身体を気遣ってくれるのも嬉しかった。そんなレナートを宥めるのもウリヤナの役目で、そうすると彼がきゅるるんと目を潤わせた子犬のように見えてくるから不思議だった。
「気にしないで。私も初めてだし、よくわからないのはお互い様よ」
 あのときにこっぴどくしかられたレナートであるが、加減が難しいのか、ウリヤナが気持ち悪くなるまで魔力を注いでくる。ウリヤナ自身も、そうやって身体が不調を訴えない限りはわからない。最初のうちは心地よいのも事実。
 今となっては、こうやって彼に魔力を注がれると、気持ちが軽くなる。そして寝てしまう。
 それはウリヤナ自身もレナートの魔力に馴染み始めているからだろう、と彼は言った。
 だが、ウリヤナに力は戻ってこない。それでもレナートはその事実を責めない。生活魔法が使えないのは不便だからと、魔力を閉じ込めた魔石やら魔導具やらを準備してくれる。
 ここまで甘えてしまっていいのかと、恐縮してしまうくらいだ。
「ねぇ、レナート。そろそろお父様たちに手紙を書いてもいいかしら? 多分、心配していると思うの」
 両親は、ウリヤナがソクーレの修道院にいると思っているだろう。もしかしたら、テルキの爆発事故の件も知っているかもしれない。
「ウリヤナが書きたいと思うなら、好きに書けばいい。何も問題ない」
「ありがとう」
 今まで手紙を書かなかったのは、クロヴィスたちに情報が流れるのも避けたかったからだ。
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