あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
「とにかく、弟の件はそういうことだ」
 そういうことも何も、すべての悪の根源はクロヴィスのような気がするのだが。
「さて、と。言いたいことも言ったし。お前の幸せそうな顔も見られたし。私も部屋に戻るとしよう。どうせお前も、これからウリヤナのところへ向かうのだろう?」
 ごちそうさまと言って席を立ったランベルトは、ひらりと手を振って部屋を出て行った。
 ロイは黙って片づけを始めるが、レナートはその場から動けずにいた。
 考えていたよりも、深くて重い。これをウリヤナに伝えるべきかどうか、悩むところでもある。

 物音が聞こえて顔をあげる。
 コツ、コツ、コツ――
 この扉の叩き方はウリヤナだ。そろりと扉が開くと、その隙間から彼女が顔をのぞかせた。
「一人?」
「あぁ。何かあったのか?」
 室内に他に誰もいないことを確認すると、彼女は身体をすべりこませてきた。
「ロイもいないの?」
「今はな」
 安心したのか、笑みを浮かべてからこちらにゆっくりと歩いてくる。
 せり出している腹部だが、この腹部がもっと大きくなるというのだから、想像もつかない。
「手紙を書いたの。それを出してもらいたくて」
「家族に?」
「えぇ」
「預かる」
「ありがとう……まだ、時間がかかりそう?」
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