あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
「ん? ヴィー?」
「なんだ、眠っていたのか?」
 微笑みの仮面をつけて、優しくコリーンに話しかける。
 寝台に腰を落とすと、ギシリと軋んでそこが沈む。
「ちょっと、疲れてしまって……」
「そうか。コリーンは公務も頑張っているからな」
 心にもない言葉を並べていく。
 とにかくコリーンは褒めておけばいい。そして調子にのったところで、こちらの思惑通りに動かそうとするのだが、彼女は聖なる力を使うことだけは頑なに拒む。
 やはり、その力がないのではないかと疑いたくもなる。しかし、そんな素振りは見せてはならない。
 こう見えてもコリーンは聖女なのだ。その聖女を、王城内にとどめておけというのが父王からの命令でもある。
「ちょっと話があるのだが、起きられるか?」
「んっ」
 小さく返事をした彼女は、やっと身体を起こした。
 癖のある赤茶の髪はぼさぼさとからみあっており、顔もどこか野暮ったい。
「何? また、聖なる力を使えって?」
 最近では、コリーンのほうが攻撃的な声掛けをしてくる。
「いや、そうではない。隣国、ローレムバから招待状が届いた」
「招待状? こんなときに?」
 彼女がそう言うのもわかる。イングラム国にとっては、()()()()()なのだ。
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