あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
「テルキは危険ですので、このままこの馬車で休んでもらいます」
「どういう意味だ?」
「言葉の通りですよ」
 アルフィーの言葉が聞こえているのかいないのかわからないが、コリーンがきゅっとクロヴィスの腕を握る。
「殿下。王都はまだいいのです。ですがね、地方の街は食料が乏しく。みな、今日を生きるのにせいいっぱいなのです。原因はわかりませんが……今年の不作は異常だと言われているほどです」
 目の前で淡々と語りかけるアルフィーが、クロヴィスの知っている彼とは別人のように思えてきた。
「知っていますか? ウリヤナ様がいなくなってからです。ウリヤナ様は、聖女として神殿で祈りを捧げ、イングラムの平和と安穏を願ってくださっていた」
「お前……何が言いたい?」
「わかりませんか? 殿下。殿下のせいで我々は聖女を失ったのです」
「聖女なら、ここにいるだろう? なぁ、コリーン?」
 クロヴィスの声にコリーンはピクリと身体を震わせた。必死にしがみついて、顔を伏せている。
「殿下も疑っておられましたよね? コリーン様の力が偽物なのではと」
「……じゃない……。偽物、じゃない……」
「そうおっしゃるのなら、力を使ってこの状況をなんとかしたらいかがですか?」
 アルフィーの声色は穏やかであるのに、どこか怒気が込められていた。
「力を使ったら、なくなるの。陛下がそうおっしゃった。ウリヤナは、力を使い過ぎて力を失ったって……」
「そんな陛下の戯言を、あなたは信じていたと?」
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