あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 アルフィーが素早く、剣を抜いた。その剣先はクロヴィスに向かっている。
「アル……何を?」
「コリーン様の力を証明してもらいましょう」
 剣先がクロヴィスの頬を撫でた。痛みが走り、つつっと何かが頬を濡らす。
「聖女様。大事な婚約者の顔に傷ができましたよ? 聖なる力で早く治してください」
「無理、無理……無理なのよ」
 コリーンが立ち上がる。
「コリーン様」
「無理、無理なの。私、もう……」
 馬車がガタンッと激しく揺れて止まった。
「きゃっ」
 コリーンはその場に倒れ込んだ。
「何が起こったのだ?」
 クロヴィスも立ち上がる。
「クロヴィス殿下……。あなたもコリーンも、終わりだということですよ」
 アルフィーはクロヴィスに向けたままの剣を下げない。
「アル……何を血迷っている? 私にそのようなものを向けて」
「血迷っている? 私は正気ですよ。ただ、殿下のせいで私にもいろいろとあったということです」
「なんだと?」
「あなたは、ウリヤナ様を手に入れるために何をされました?」
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