あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 アルフィーの紫紺の瞳が、クロヴィスを鋭く射抜く。
「あなたは、この国を背負って立つ人間になるというのに、ローレムバの魔術師と手を組みましたね?」
 クロヴィスはひくりとこめかみを震わせた。
「ア、アル……何を言っている?」
「そうやってしらを切るつもりですか? カール子爵家が傾いた理由を私が知らないとでも? 私の名を使ったことも、私にバレないとでも思っていたのですか?」
 うまくやったはずなのに、まさかアルフィーに知られていたとは――。
 クロヴィスはゴクリと喉を上下させる。アルフィーはクロヴィスの駒だ。その駒が勝手に動くなど、あってはならない。
 それなのに――。
 馬車の入り口が大きく開かれ、黒尽くめの男たちが乗り込んできた。真っ暗な闇のような衣装を身に着ける者たち。どこか、イングラム国の人間とは異なる感じがする。
「あとは、任せます」
 彼らにそう告げたアルフィーは、馬車から飛び降りた。
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