あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
力を失った自分に対して、彼らがここまで気にかけてくれているとは思ってもいなかった。コリーンの言葉通り、追い出されるものと思っていたからだ。
神殿側の気持ちに胸の奥が熱くなる。
それでも、彼らの言葉に甘えてはならない。この場にとどまれば、両親や弟にも迷惑をかけてしまうだろう。それに、クロヴィスやコリーンの知らない場所に行きたかった。
ウリヤナの両親は彼女が神殿で生活するのをよしとはしなかった。自分たちに金さえあればと、何度も悔やんでいた。家族だからと彼らは言ったが、ウリヤナも家族だからこそ両親と弟には苦労のない生活を送って欲しいと思ったのだ。
クロヴィスとの婚約の話があがったときも、父親だけは身分不相応だと口にした。だが、そんな理由で婚約の話が立ち消えになるわけではない。むしろ聖女となってしまった彼女にとって、クロヴィスの婚約者として相応しい身分を手にいれてしまったのだから。
断る術などもっていなかったし、断れないともわかっていた。だけど、婚約期間を通して、互いがわかりあえるような時間を過ごせたならいいなと、思わなかったわけではない。
それに、婚約した当初、彼は優しかったのだ。その関係が変わってしまったのは、婚約から半年経ってからだろうか。
理由はわからない。人の気持ちは移ろいやすいもの。むしろ、最初からあの婚約に、彼の気持ちなんてなかったのかもしれない。
義務。そして、情欲。
「ウリヤナ様。私はここまでしかご一緒できません」
王都の南の外れにある、馬車乗り場。ここには各方面へと向かう乗り合い馬車が集まっている場所でもある。ここまでくれば、ウリヤナ一人であったとしても、国内のあらゆる場所へと移動ができる。
「ウリヤナ様。乗り合い馬車はいろいろな方が利用されます。けして気を抜かぬよう、お願いします。ましてウリヤナ様は……」
御者はウリヤナの手を両手で握りしめた。まるで、子どもの門出を心配するような親にも見えなくはない。実際、送ってくれた御者は、ウリヤナの父親と同年代である。
神殿側の気持ちに胸の奥が熱くなる。
それでも、彼らの言葉に甘えてはならない。この場にとどまれば、両親や弟にも迷惑をかけてしまうだろう。それに、クロヴィスやコリーンの知らない場所に行きたかった。
ウリヤナの両親は彼女が神殿で生活するのをよしとはしなかった。自分たちに金さえあればと、何度も悔やんでいた。家族だからと彼らは言ったが、ウリヤナも家族だからこそ両親と弟には苦労のない生活を送って欲しいと思ったのだ。
クロヴィスとの婚約の話があがったときも、父親だけは身分不相応だと口にした。だが、そんな理由で婚約の話が立ち消えになるわけではない。むしろ聖女となってしまった彼女にとって、クロヴィスの婚約者として相応しい身分を手にいれてしまったのだから。
断る術などもっていなかったし、断れないともわかっていた。だけど、婚約期間を通して、互いがわかりあえるような時間を過ごせたならいいなと、思わなかったわけではない。
それに、婚約した当初、彼は優しかったのだ。その関係が変わってしまったのは、婚約から半年経ってからだろうか。
理由はわからない。人の気持ちは移ろいやすいもの。むしろ、最初からあの婚約に、彼の気持ちなんてなかったのかもしれない。
義務。そして、情欲。
「ウリヤナ様。私はここまでしかご一緒できません」
王都の南の外れにある、馬車乗り場。ここには各方面へと向かう乗り合い馬車が集まっている場所でもある。ここまでくれば、ウリヤナ一人であったとしても、国内のあらゆる場所へと移動ができる。
「ウリヤナ様。乗り合い馬車はいろいろな方が利用されます。けして気を抜かぬよう、お願いします。ましてウリヤナ様は……」
御者はウリヤナの手を両手で握りしめた。まるで、子どもの門出を心配するような親にも見えなくはない。実際、送ってくれた御者は、ウリヤナの父親と同年代である。