あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 その微妙な気持ちが、恥ずかしくもあり嬉しくもあった。
「カール子爵家には、神官長のほうからそれとなく伝えてくれるそうです」
 ウリヤナが力を失い、聖女ではなくなったこと。そして、北のソクーレにある修道院に身を寄せること。それらをウリヤナは自分から両親には伝えていなかった。
 聖女になったときに、カールという姓を失ったからだ。
「ありがとう。あなたにも迷惑をかけたわね」
 ウリヤナの言葉に御者はぶんぶんと首を横に振る。彼の目尻は滲んでいた。
「ウリヤナ様が神殿に来られたのは、ウリヤナ様の意思ではないかもしれませんが……。それでも私たちにとっては、喜ばしいことであったのです」
「そうね……」
 御者の言葉に、ウリヤナは微かに笑みを浮かべた。
 ――神殿で生活をし、聖なる力を高める。
 それが、ウリヤナが聖女として求められるものだと思った。もちろん、神殿に入らないという選択肢もある。
 だけど神殿はウリヤナを快く受け入れ、優しく丁寧に接してくれた。ウリヤナが聖女だからという理由もあるのかもしれないが、もともと神殿に務めている者たちの人柄もあるのだろう。
 思い返してみれば、王城に務めている者と神殿に務めている者、なんとなく雰囲気が異なった。
 だが、ウリヤナが神殿に入るという話に、金が見え隠れしていたのも事実である。
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