あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
それに、聖女となってしまうと、これからのウリヤナの人生はウリヤナのものではなく、聖女のものとなり国のものとなる。今後の自分の生活を王族によって勝手に決められてしまったのだから、金くらい望んでも罰は当たらない。
むしろ、聖女褒賞金という制度は昔からある。聖女は聖女であって、他の何者ではないから。個人という存在はなくなってしまうから。
だからウリヤナは正当な要求を突きつけただけ。たとえ国王が、嫌な顔をして、渋々と褒賞金を払ったとしても。
ウリヤナが聖女となり神殿で生活をし始めた途端、カール子爵家の懐は潤った。それでも彼らの生活は質素であり、民のためにと奔走している。
そのような場所にウリヤナが戻ったとしたら、また両親は胸を痛めるにちがいない。
そんなウリヤナは、婚約解消時にクロヴィスに一つだけ約束を取り付けていた。それは、ウリヤナが聖なる力を失い、聖女でなくなってしまったが、今まで王家がカール子爵家に支払った褒賞金などの返還を求めないようにするものだった。
クロヴィスは「そんなことか」と鼻で笑って、サインをした。
だから、きっと大丈夫――。
ウリヤナは自分にそう言い聞かせて、北に向かう乗り合い馬車へと乗り込んだ。
ほろはどこか色あせており、中は湿った木のにおいがたちこめている。
聖女ウリヤナが利用していた神殿の馬車とは、見るからに違う。みすぼらしく、質素であり、けして乗り心地がよさそうとは思えない馬車。
乗り合い馬車には、母子と思われる女性と幼い男の子、商人風の格好をしたでっぷりとした男性の計、三人が乗っていた。
どこに座ろうかと考えながら座席をぐるりと見回したあと、やはり同じ女性のほうが安心するのもあって、彼女たちに近いほうの席を選んだ。
すると男の子がウリヤナに気づき、ニコリと微笑む。ウリヤナも笑顔を返す。
むしろ、聖女褒賞金という制度は昔からある。聖女は聖女であって、他の何者ではないから。個人という存在はなくなってしまうから。
だからウリヤナは正当な要求を突きつけただけ。たとえ国王が、嫌な顔をして、渋々と褒賞金を払ったとしても。
ウリヤナが聖女となり神殿で生活をし始めた途端、カール子爵家の懐は潤った。それでも彼らの生活は質素であり、民のためにと奔走している。
そのような場所にウリヤナが戻ったとしたら、また両親は胸を痛めるにちがいない。
そんなウリヤナは、婚約解消時にクロヴィスに一つだけ約束を取り付けていた。それは、ウリヤナが聖なる力を失い、聖女でなくなってしまったが、今まで王家がカール子爵家に支払った褒賞金などの返還を求めないようにするものだった。
クロヴィスは「そんなことか」と鼻で笑って、サインをした。
だから、きっと大丈夫――。
ウリヤナは自分にそう言い聞かせて、北に向かう乗り合い馬車へと乗り込んだ。
ほろはどこか色あせており、中は湿った木のにおいがたちこめている。
聖女ウリヤナが利用していた神殿の馬車とは、見るからに違う。みすぼらしく、質素であり、けして乗り心地がよさそうとは思えない馬車。
乗り合い馬車には、母子と思われる女性と幼い男の子、商人風の格好をしたでっぷりとした男性の計、三人が乗っていた。
どこに座ろうかと考えながら座席をぐるりと見回したあと、やはり同じ女性のほうが安心するのもあって、彼女たちに近いほうの席を選んだ。
すると男の子がウリヤナに気づき、ニコリと微笑む。ウリヤナも笑顔を返す。