あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
騎士団が現れた途端、不審な動きをしている男がいる。走って逃げられないのは、足を怪我したのだろう。それでも這うようにして、ここから距離を取ろうとしているのだ。見るからに不審者である。
騎士の男はレナートの視線の先に気づいたのか、この場からなんとか逃げ出そうとしている小太りの男へと身体を向けた。
小太りの男に一斉に人が集まり、彼を拘束した。
それを見届けたレナートは、男の子を見やる。
「おい、お前」
男の子を呼んだつもりだが、残念ながら名前を知らない。
「名前は?」
「おじさん。人に名前をきくときは、自分の名前からだよ」
少し後ろをついてくる彼の母親がヒヤヒヤしている様子が伝わってくる。だが、レナートは子どもが嫌いではない。ただ、子どもが勝手に怯えるだけなのだ。
「そうか。それは失礼した。俺の名はレナート・ザフロス。おじさんではない」
むしろ最後の一言が一番伝えたかった言葉でもある。
「ぼくはマシュー」
歩くたびに抱きかかえているウリヤナの身体がずり落ちてくる。もう一度抱え直す。
「そうか、マシュー。いい子だな」
マシューもそう言われて悪い気はしないようだ。
レナートはできるだけ人の少ない道を選んで歩いていたつもりだった。だが、人々が忙しく行き交い、声が響く。
炎の勢いは弱まり、周囲への影響の心配は減った。
それでもまだ火種はくすぶっているし、何よりも爆発した原因を探らねばならないだろう。
騎士の男はレナートの視線の先に気づいたのか、この場からなんとか逃げ出そうとしている小太りの男へと身体を向けた。
小太りの男に一斉に人が集まり、彼を拘束した。
それを見届けたレナートは、男の子を見やる。
「おい、お前」
男の子を呼んだつもりだが、残念ながら名前を知らない。
「名前は?」
「おじさん。人に名前をきくときは、自分の名前からだよ」
少し後ろをついてくる彼の母親がヒヤヒヤしている様子が伝わってくる。だが、レナートは子どもが嫌いではない。ただ、子どもが勝手に怯えるだけなのだ。
「そうか。それは失礼した。俺の名はレナート・ザフロス。おじさんではない」
むしろ最後の一言が一番伝えたかった言葉でもある。
「ぼくはマシュー」
歩くたびに抱きかかえているウリヤナの身体がずり落ちてくる。もう一度抱え直す。
「そうか、マシュー。いい子だな」
マシューもそう言われて悪い気はしないようだ。
レナートはできるだけ人の少ない道を選んで歩いていたつもりだった。だが、人々が忙しく行き交い、声が響く。
炎の勢いは弱まり、周囲への影響の心配は減った。
それでもまだ火種はくすぶっているし、何よりも爆発した原因を探らねばならないだろう。