あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
「ところでマシュー。俺に助けを求めたのは、お前か? ずっと心の中で助けてと叫んでいただろう?」
「うん。おねえちゃんを助けてって思ってた。おじさん……」
「レナートだ」
「レナートには、ぼくの心の声が聞こえたの?」
「そうだな……。マシュー、お前は魔法が使えるのか?」
 ぷるぷると小刻みに首を横に振る。
「この子はまだ、魔法が使えません」
 母親がそっと口を添える。魔法が使えないというのは、生活魔法を使えないという意味だろう。となれば、高等魔術の思念伝達魔法を使えるはずもない。
 いや、本人が気づかぬだけで、無意識にという場合もある。
「そうか……だが、俺にはマシューの声が聞こえたんだ。もしかしたら、将来、俺と同じように魔術師になれるかもしれないな」
「おじさんは……」
「レナートだ」
「レナートは、魔術師なの?」
「そうだ」
「あの……」
 またそこで母親が口を挟む。
「この子は、それほど魔力が強くないのです。ですから、この子の声が聞こえたというのであれば、それはレナート様の力によるものではないのでしょうか……」
 期待されても困る。そういった思いが母親からは伝わってきた。
「そうかもしれないな」
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