あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
胸のつかえがとれた。
「ありがとうございます」
あの状況で死人が出なかったのは、やはりあの魔石のおかげだろう。神官たちにも感謝しなければならない。
「……あ、名前……」
礼を口にして、彼の名を聞いていないことに気づく。
「俺はレナートだ。聖女ウリヤナ様……」
男のその言葉は、助けてくれた感謝の気持ちも忘れてしまうくらいの威力があった。
じろりと、厳しい目つきで男を睨んだ。
癖のある黒い髪は一つに結わえてあり、一重の青色の瞳がどこか冷たく感じる男。
「そんな顔をしなさんな。美人さんが台なしだな。それよりもマシューが心配してた。俺に助けを求めたのもマシューだ」
マシューは馬車で一緒になった男の子であり、ずっと気にしていた彼でもある。そしてその母親も。
「今日はもう遅いから、明日、マシューたちに会わせてやる」
「マシューたちは無事なのですか?」
「ああ。母親と一緒に隣の部屋で休んでいる」
「ありがとう、ございます……」
ここまでよくしてくれるなら、レナートという男は敵ではないのだろう。それに、聖女といってもそれは過去のこと。力を使えと言われても、そんな力はとっくに失ってしまった。彼が聖女の力を手に入れたいと思っているのなら、それは叶わぬこと。しかし、それを見返りに、助けてくれたのかもしれない。
「俺も、お前に聞きたいことはいろいろとあるんだが、今日はもう休め」
彼の手がぽふっと頭を撫でた。その手があまりにも優しくて、彼が聖女の力を狙っていると考えてしまった自分を恥じたくなる。それでも油断はできない。
「ありがとうございます」
あの状況で死人が出なかったのは、やはりあの魔石のおかげだろう。神官たちにも感謝しなければならない。
「……あ、名前……」
礼を口にして、彼の名を聞いていないことに気づく。
「俺はレナートだ。聖女ウリヤナ様……」
男のその言葉は、助けてくれた感謝の気持ちも忘れてしまうくらいの威力があった。
じろりと、厳しい目つきで男を睨んだ。
癖のある黒い髪は一つに結わえてあり、一重の青色の瞳がどこか冷たく感じる男。
「そんな顔をしなさんな。美人さんが台なしだな。それよりもマシューが心配してた。俺に助けを求めたのもマシューだ」
マシューは馬車で一緒になった男の子であり、ずっと気にしていた彼でもある。そしてその母親も。
「今日はもう遅いから、明日、マシューたちに会わせてやる」
「マシューたちは無事なのですか?」
「ああ。母親と一緒に隣の部屋で休んでいる」
「ありがとう、ございます……」
ここまでよくしてくれるなら、レナートという男は敵ではないのだろう。それに、聖女といってもそれは過去のこと。力を使えと言われても、そんな力はとっくに失ってしまった。彼が聖女の力を手に入れたいと思っているのなら、それは叶わぬこと。しかし、それを見返りに、助けてくれたのかもしれない。
「俺も、お前に聞きたいことはいろいろとあるんだが、今日はもう休め」
彼の手がぽふっと頭を撫でた。その手があまりにも優しくて、彼が聖女の力を狙っていると考えてしまった自分を恥じたくなる。それでも油断はできない。