あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
「あ。レナートが助けてくれたんだよ」
 わざわざそうやって言い直すマシューは素直な子である。
 レナートはどこか苦々しい表情をしているが。そんなやり取りを見ているだけで、ウリヤナの口元も綻んでしまう。どこか微笑ましいのだ。
「積もる話はあるだろうが、先に朝食にしないか? マシュー、腹が減ってるだろう?」
「うん。ぼく、お腹ぺこぺこ」
 マシューがお腹に手を当てると、レナートの目が糸のように細くなった。どことなく柔らかな表情を浮かべている彼に、おもわず目を奪われた。
 人は空腹になっていると、考えも悪い方向へと向かってしまうらしい。腹が満たされるにつれ、頭の中もすっきりとしてくる。
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