あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 まだ実感のないお腹の上にそっと両手を添えた。だが、もうあそこには戻れない。だけど、腹に子を宿したまま修道院へ行くのも気が引ける。今であれば知らんぷりをしていくことはできるけれど、日が経つにつれお腹が大きくなっていけば、他の者にも迷惑をかけるだろう。
 そんなウリヤナの様子にレナートも気がついたのだろう。
「戻るつもりはないのだな?」
「はい」
 そこだけははっきりとしている。神殿にも王城にも、そしてカール子爵家の屋敷にも戻るつもりはない。
 コホンとレナートは咳ばらいをした。
「だったら……俺のところにくるか?」
「え、と……?」
 彼の言っている意味がわからない。いや、信じられない。ぱちぱちを目を瞬く。
「家には戻れないのだろう? 修道院にも行けないのだろう? だったら、腹に子を宿したままどこへ行くつもりなんだ?」
「それは、これから探そうかと……」
 そんな言い訳のような言葉を口にしながらも、ウリヤナを受け入れてくれるような場所があるとは思えない。
 だからこそ、修道院を選んだのだ。そこですら、このような状況になってしまっては難しいだろう。
「これから探すのであれば、その探した先が俺のところでも問題ないよな?」
「え、と。そう、そうですね……?」
「だったら、決まりだな。今の時期なら移動も負担にならないだろう。それに、俺が魔法でなんとかしてやるから、難しく考える必要はない」
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