あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか? 私と殿下の婚約は、殿下側が望んでされたことですよね?」
「ああ、そうだ。君は聖女であって、聖なる力を持っていたからな。聖なる力を持つ女性は貴重な存在だ。そのような女性を野放しにしておくことなどできないだろう?」
 ウリヤナはひくっとこめかみを動かした。
 彼女に『聖なる力』があるとわかったのは、デビュタントのために両親と王城を訪れたときである。
 国王への挨拶が終わったデビュタントたちは、必ず神官による魔力鑑定を受ける。
 誰でも持ち合わせている魔力であるが、魔力にも強さや種類があり相性がある。その強さと種類が落ち着くのが成人を迎える頃と言われており、このタイミングで魔力鑑定をされるのだ。
 男性も同様で、成人を迎えた頃に魔力鑑定を受ける。
 それが慣例でもあった。
 その慣例に沿った結果、ウリヤナには魔力とは似て異なる聖なる力があるとわかったのである。
 聖なる力は癒しの力。人々を痛みと苦しみから解放する力ともされている。さらに、神からも力を借りて奇跡を起こすとも。
 そういった力を持つ女性は、『聖女』と呼ばれていた。
 聖女の力は貴重な力であるため、神殿が管理する。
 ウリヤナは両親と別れ、神殿で生活することを望んだ。
 聖女と呼ばれる人物であっても特例が認められれば、好きなところで過ごすのも可能だった。
 だが、ウリヤナはあえて神殿を選んだ。それは、金のためでもある。
 聖女を輩出した家系に支払われる聖女褒賞金と呼ばれるもの。ウリヤナが神殿で生活することで、その聖女褒賞金がカール子爵家に支払われる。
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