あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 いつの間にか力を失ったウリヤナだが、それを知っているのは神殿にいる神官たち、国王と王妃。そしてクロヴィスとコリーン。神殿関係者と王族のみ。
 ウリヤナの力が失われたことに最初に気づいたのが国王だった。ここに知られたら、ごまかしはきかない。
 彼女は、聖女として、王太子の婚約者として、国王と王妃と共に行動するのが多かった。だからすぐに国王はわかったのだろう。
『あれはもはや聖女ではない。婚約を解消しろ』
 ウリヤナに婚約解消を突き付けたのは、父王の言葉も原因の一つであった。
 手放したくないがために自分のものにしたのに、結局失ってしまった。
 そして聖なる力を手に入れたとされているコリーンと婚約した。これも父王の言葉と、自分の愚かな行為によるもの。
 彼女はウリヤナが親しくしていた友人の一人だった。だからコリーンのことは、初めから気に食わなかった。
 それでも、きっと大丈夫だと思った。ウリヤナを失わずに、聖なる力を手元におけると思っていたのだ。

 それから十日後――。
 ウリヤナの行方を調べていたアルフィーから、報告があがった。
「殿下。どうやらウリヤナ様は北のソクーレにある修道院に向かったようです」
「よりによってソクーレか」
 北の国境の街ソクーレは、隣国ローレムバに接している。ソクーレの関所を抜ければ、その先はローレムバ国の国土となる。
「ですが、中継点のテルキの町で行方不明になったと……」
「テルキだと?」
 その町の名は記憶に新しい。
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