あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 だが、その聖女があのウリヤナ・カールであるとは、アルフィーも思っていなかった。
 ただのウリヤナ・カールであれば、クロヴィスの相手として相応しいかどうかと疑いたくなるところである。まして、近頃耳にするカール子爵家の噂。クロヴィスが望んでも、周囲は反対するだろう。
 むしろ、他家の令嬢からという話になっていたかもしれない。その間にウリヤナが他の男性と結ばれれば、クロヴィスは彼女を手に入れることができない。
 それが一気に逆転した。
 聖女という地位は、どの家柄よりも優位に働く。むしろ、王族と同等の地位だ。たとえカール子爵家の噂があったとしても、ウリヤナ・カールは聖女ウリヤナとして扱われるのだ。だから、カール子爵家など関係ない。
 むしろクロヴィスの相手として、これ以上相応しい女性はいないだろう。
 ウリヤナが聖女だった。それを知ったときのクロヴィスの勝ち誇ったような顔は、今でも忘れられない。
『やはりウリヤナは私に相応しい女性だった。そう思わないか?』
『そうですね。聖女ウリヤナ様と王太子クロヴィス殿下。お二人がご結婚なされば、民も喜ぶことでしょう』
 アルフィーがそう口にしただけで、クロヴィスは悦に入ったような笑みを浮かべる。
 もしかしたら、そのときのアルフィーの言葉が彼の背を押したのだろうか。
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