あなたの子ですよ～王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ～
　燃えるような愛情ではなくとも、信頼で結ばれているような関係。というのが、アルフィーから見た二人の印象でもある。
　いや、ウリヤナはクロヴィスに信頼を寄せ、クロヴィスはウリヤナに愛情を見せていた。その愛情は執着とも呼べるような際どいもの。
『そう思うなら、本人に聞いてみたらどうですか？』
　他の者から見れば、お互いに遠慮して気持ちがすれ違っているだけの初々しい二人にしか見えない。
『そんなこと聞けるわけないだろう？』
　顔中を真っ赤にしながらそう答えたクロヴィスが、どれだけウリヤナを想っているのかをひしひしと感じた。
　だから、壊してやりたいと思った。魔が差したとも言う。
『でしたら、他の女性と仲良くなって、その様子をウリヤナ様に見せつければよいのでは？』
　くすりと笑ったアルフィーに、クロヴィスは金色の目を見開いて不思議そうに見つめてきた。
『男女の仲というのは駆け引きなのです。押してだめなら引いてみろとよく言うではないですか。クロヴィス様が他の女性と仲良くされれば、きっとウリヤナ様も嫉妬してくださいますよ？』
『そうなのか？』
　男女の仲に疎いクロヴィスは、アルフィーの言葉に従った。
　ウリヤナが聖女となる前に、彼の婚約者候補として名を連ねていた令嬢たちに声をかけるようになった。
　夜会にウリヤナを連れて参加はするものの、あとは他の女性と時間を過ごす。それだって、ウリヤナに嫉妬してほしいが故の行動だ。
　しかし、ウリヤナにそのような気持ちが通じるわけがない。
　二人の関係に溝ができていく。
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