あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 カール子爵は、角が立たないように、「少し考えさせてほしい」と、連絡する。
 それ以降、王家からはなんの返事もなかった。だからといって、怒っている様子もない。丸くおさまったと、カール子爵は胸をなでおろした。
 王家の話にのっておくべきだったかと思う日もあったが、ウリヤナには心から好きになった人と一緒になってもらいたいという願いもあった。
 だからあのときの対応は、あれで間違えていなかった。

 この国では十六歳の成人を迎えると、魔力鑑定を受けるのが慣例である。デビュタントを迎える女性は、そのときに。男性は十六歳の誕生日に神殿に足を向ける。
 それは平民であっても同じで、彼らにとっても十六歳の誕生日は特別であり、神殿で魔力鑑定を受けると共に成人を祝う場でもある。
 魔力は大なり小なり誰でも備えているもの。そういった魔力鑑定ができる者は、神殿で神官として務めることが多い。
 魔力鑑定をする目的は、特別な魔力を持つ者を見つけると共に、魔導具の使い方を教えるためでもある。
 魔導具は生活に根付いている便利な道具であるため、一部からは生活具とも呼ばれている。
 その魔導具を使用するには魔力が必要であり、使う者の魔力が消費される。
 また、魔力には属性があるので、魔導具との相性もあった。使用者の魔力と魔導具の相性が悪く、事故にもなったという報告もあるくらい。もしくは、誤った使い方をして、という報告もある。
 そういったことを防ぐためにも、魔力が落ち着く成人をむかえるこの時期に、魔力鑑定を受ける習わしとなった、と言われている。
 となれば、ウリヤナも例外ではない。
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