あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
『お父様。私が聖女となり神殿に入れば、聖女褒賞金が国から支払われます。それで、立て直しをお願いします』
ウリヤナは、家のために神殿へ入ると決意したのだ。彼女の言う通り、聖女褒賞金が手に入れば、お金のない現状から抜け出せる。
『ウリヤナ……不甲斐ない父で、申し訳ない……』
深く頭を下げた。なかなか顔を上げられないのは、目頭から涙がこぼれそうになっているから。
『いいえ、お父様。これは私が決めたこと。お父様のせいではありません』
ウリヤナは、ウリヤナ・カールという名を捨て、聖女になる道を選ぶのだ。娘でありながら、娘ではなくなる。
『ウリヤナ……たとえ離れても、君は私たちの娘だ。君の幸せを願っている』
まだ顔は上げられない。涙が引くのを待つ。
『はい。私も、お父様とお母様の幸せを願っております。どうか、イーモンをお願いします』
その日は、三人で熱い抱擁を交わした。
それからしばらくして、ウリヤナは神殿へと向かった。
そんな彼女の背をイーモンだけは冷めた目で見ていた。
さらにカール子爵に追い打ちをかけるような出来事があったのは、ウリヤナが神殿にいってから一年後のことである。
ウリヤナとクロヴィスの婚約が決まったのだ。
聖女となったウリヤナの婚約に、カール子爵家の意向など確認されない。王家と神殿での話し合いで決められたのだろう。
あのときにやんわりと断った縁談が、再浮上するとは思ってもいなかった。だが彼女は、他の令嬢の誰よりも、王太子の婚約者として相応しい身分を手に入れてしまった。
すなわち、それが聖女――。
胸がギリギリと締め付けられるように痛み、呼吸がうまくできなかった。
ウリヤナは、家のために神殿へ入ると決意したのだ。彼女の言う通り、聖女褒賞金が手に入れば、お金のない現状から抜け出せる。
『ウリヤナ……不甲斐ない父で、申し訳ない……』
深く頭を下げた。なかなか顔を上げられないのは、目頭から涙がこぼれそうになっているから。
『いいえ、お父様。これは私が決めたこと。お父様のせいではありません』
ウリヤナは、ウリヤナ・カールという名を捨て、聖女になる道を選ぶのだ。娘でありながら、娘ではなくなる。
『ウリヤナ……たとえ離れても、君は私たちの娘だ。君の幸せを願っている』
まだ顔は上げられない。涙が引くのを待つ。
『はい。私も、お父様とお母様の幸せを願っております。どうか、イーモンをお願いします』
その日は、三人で熱い抱擁を交わした。
それからしばらくして、ウリヤナは神殿へと向かった。
そんな彼女の背をイーモンだけは冷めた目で見ていた。
さらにカール子爵に追い打ちをかけるような出来事があったのは、ウリヤナが神殿にいってから一年後のことである。
ウリヤナとクロヴィスの婚約が決まったのだ。
聖女となったウリヤナの婚約に、カール子爵家の意向など確認されない。王家と神殿での話し合いで決められたのだろう。
あのときにやんわりと断った縁談が、再浮上するとは思ってもいなかった。だが彼女は、他の令嬢の誰よりも、王太子の婚約者として相応しい身分を手に入れてしまった。
すなわち、それが聖女――。
胸がギリギリと締め付けられるように痛み、呼吸がうまくできなかった。