あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
手元には、ウリヤナから届いた一通の手紙がある。
それは彼女の近況を知らせるものだった。
「あなた……」
隣から、覗き込むようにしてその手紙を読んだ夫人は、目頭をおさえている。
「ウリヤナは今、幸せなのね」
「そのようだな」
喉の奥から、そう声を絞り出すのがせいいっぱいだった。これ以上、口を開くと、目の栓がゆるんでしまう。
彼女の手紙には、隣国ローレムバで暮らしていると書いてあった。さらに、好きな人と結婚をし、子を授かったことまで。
報告が事後になってしまったことについての謝罪もしたためてあった。
だが、謝罪などしなくていい。
それが、彼女の親としての気持ちである。幸せでさえあれば、ただそれだけでいい。
ウリヤナが聖女ではなくなり神殿から立ち去った話は、もちろんカール子爵夫妻の耳にも届いていた。そして、それすら止める手段も力も持ち合わせていなかった。
ウリヤナが聖女となったとき聖女褒賞金を受け取っている事実が頭をかすめた。そのため、それの返還が気になった。カール子爵家にはけして余裕があるわけではないし、その褒賞金で立て直したのも事実。そして、彼女が聖女となくなったことで、一瞬、お金の心配をしてしまったのも事実。
しかし、褒賞金の返還は求められなかった。きっとウリヤナのことだから、なにかしら手を回したにちがいない。
それは彼女の近況を知らせるものだった。
「あなた……」
隣から、覗き込むようにしてその手紙を読んだ夫人は、目頭をおさえている。
「ウリヤナは今、幸せなのね」
「そのようだな」
喉の奥から、そう声を絞り出すのがせいいっぱいだった。これ以上、口を開くと、目の栓がゆるんでしまう。
彼女の手紙には、隣国ローレムバで暮らしていると書いてあった。さらに、好きな人と結婚をし、子を授かったことまで。
報告が事後になってしまったことについての謝罪もしたためてあった。
だが、謝罪などしなくていい。
それが、彼女の親としての気持ちである。幸せでさえあれば、ただそれだけでいい。
ウリヤナが聖女ではなくなり神殿から立ち去った話は、もちろんカール子爵夫妻の耳にも届いていた。そして、それすら止める手段も力も持ち合わせていなかった。
ウリヤナが聖女となったとき聖女褒賞金を受け取っている事実が頭をかすめた。そのため、それの返還が気になった。カール子爵家にはけして余裕があるわけではないし、その褒賞金で立て直したのも事実。そして、彼女が聖女となくなったことで、一瞬、お金の心配をしてしまったのも事実。
しかし、褒賞金の返還は求められなかった。きっとウリヤナのことだから、なにかしら手を回したにちがいない。