あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
くるりと封筒をひっくり返して、差出人を確認する。
ウリヤナの名があった。だが、そこに「カール」の姓はない。
「姉さんからだ。父さんと母さんにも届いたのか?」
「はい。ウリヤナ様は旦那様と奥様にも、手紙を書かれたようです」
少しだけ家令の目が潤んでいた。懐かしさがこみあげてきたにちがいない。こうやってみな、ウリヤナを想っているのだ。
イーモンは急く心を落ち着けながら、封を切った。
中には一枚の紙切れ。
『ローレムバにいます』
たった一言。居場所を示す言葉だけだった。
イーモンを労わる言葉も、自身の状況を表す言葉もなかった。ただ、居場所を伝えるその一言のみ。
その手紙をぐしゃりと握りしめたイーモンは音を立てて立ち上がり、父親の執務室へと足を向ける。
「父さん……」
ノックもせずに部屋に入ると、そこには涙を拭っている母親の姿もあった。二人は、執務席の前にあるソファに寄り添って座っている。
「イーモン……ウリヤナからの手紙を読んだのだな?」
母親の肩を抱きながら、イーモンを見上げた。
「はい……姉さんは、ローレムバにいるって……」
「そのようだな。向こうで、好きな人ができたと、そう書かれていた」
ウリヤナの名があった。だが、そこに「カール」の姓はない。
「姉さんからだ。父さんと母さんにも届いたのか?」
「はい。ウリヤナ様は旦那様と奥様にも、手紙を書かれたようです」
少しだけ家令の目が潤んでいた。懐かしさがこみあげてきたにちがいない。こうやってみな、ウリヤナを想っているのだ。
イーモンは急く心を落ち着けながら、封を切った。
中には一枚の紙切れ。
『ローレムバにいます』
たった一言。居場所を示す言葉だけだった。
イーモンを労わる言葉も、自身の状況を表す言葉もなかった。ただ、居場所を伝えるその一言のみ。
その手紙をぐしゃりと握りしめたイーモンは音を立てて立ち上がり、父親の執務室へと足を向ける。
「父さん……」
ノックもせずに部屋に入ると、そこには涙を拭っている母親の姿もあった。二人は、執務席の前にあるソファに寄り添って座っている。
「イーモン……ウリヤナからの手紙を読んだのだな?」
母親の肩を抱きながら、イーモンを見上げた。
「はい……姉さんは、ローレムバにいるって……」
「そのようだな。向こうで、好きな人ができたと、そう書かれていた」