溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
彼の言っている意味がわからなくて思わず首を傾げた。


だってここまで言ってくれる人なんて誰もいなかったから。


「いや、なんでもないです。
とにかく俺はおそばを離れません」


「執事をやめないでいてくれるってこと?」


「はい、もちろんです」


「でも、ほんとにいいのかな……」


にわかには信じられなくて彼の端正な顔をじっと見つめる。


「俺は若葉お嬢様の執事ですから、おそばを離れたりしません」


私をまっすぐに見つめ返す彼の瞳は澄んでいて一点の曇りもない。


「信じてくれますか?」


「う、うん」


これ以上なんと言おうと彼の意志は変わらない気がした。


「あり……がと」


安堵したら気が抜けてまた目頭が熱くなってきた。


でも今度はさっきまでの涙とは違う。


ほんとはひとりぼっちになることがすごく怖かったの。だけど、仕方が無いんだって自分に言い聞かせていたんだ。
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