溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
「うっ、ふうぅ、えっ、ヒック」


安堵したら小さい子どもみたいに声をだして泣き出してしまった。


「おわっ、どうしました?
大丈夫ですか?」


「しおんー、エッ、ウウウ」


堰を切ったように感情が溢れてきて止められない。


こんなに泣いたのはいつぶりだろう。


「泣かないでください。お嬢様にこんなに泣かれたらどうしたらいいか……俺は、困るんです」


彼はそう言って私の背中を優しくさすってくれた。


大きくて頼り甲斐のある手の温もりが伝わってきて。


冷え切っていた心に燈がともっていくみたいだ。


「お嬢様、少しの間は辛いかもしれないけど我慢してください。
きっと、すべていい方向に向かいます。旦那様も奥様も頑張ってくれていますから」


彼の力強い励ましにこくりと頷く。


そうだ、彼の言うとおり両親は海外でいまも一生懸命会社を立て直そうと踏ん張ってくれている。
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