溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
もしかしたら、勘のいい彼は私の子供っぽい嫉妬を察知したのかも。


困らせてるよね、きっと。


「お嬢様は何も心配することはありません。
それより、普段通りしっかり勉強して楽しく学校生活を過ごして欲しいんです」


普段通り、なんて私だけそんなに呑気にしていていいのかな。


「きっと、旦那様や奥様もそう願っていると思います」


「でも」


一瞬躊躇したけど、おずおずと尋ねてみる。


「ちゃんと私のところへ帰ってきてくれる?」


ああ、とうとう激重いことを言ってしまった。


「……」


どうしょう、恥ずかしい。


「あ、ううん、じゃなくて」


誤魔化すように笑おうとしたけど、うまく表情筋が動かない。


「……そうじゃなくて」


気がついたら一歩近づいて彼の腕に縋りついていた。


どうか私のもとから離れていかないで。

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