溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
こんなふうに学校で彼に甘えるようなことをするのは初めて。


私どうしちゃったんだろう。


制御できなくなった壊れたお人形みたい。


「お嬢様?」


「ごめん」


自分でも何がしたいのかわからなくて、急いで彼に謝った。


「俺は……」


「……」


すると、彼の真剣な声が降ってくる。


「どんなに離れていても、いつもお嬢様を思っています」


「……」


コクって頷いたら優しく頭を撫でられた。


胸の奥がジワリと熱くなる。


「俺が帰る場所はお嬢様のところだけですから」


彼はいつも、私のいちばん欲しい言葉をくれる。


「うん」


「てか、バイトに行くだけですよ。今生の別れってわけじゃありませんから」


ちょっと苦笑いしながら照れ臭そうに後頭部をかく。


「そうなんだけど」


上目遣いにじーっと見上げれば、コクっと息を呑む彼。
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