溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
「あの時の……」


「はい、先日は大変失礼いたしました」


「い、いえ」


「あの、僕は沢田といいます。紫音君と同じ執事科の3年1組です」


「はあ」


彼は改めて自己紹介をしてくれたけど、どういう反応をしていいのかわからない。


この前あんなことがあったから気を付けないと。


それにしても、彼は紫音と同じクラスだったのか。


誘拐されかけたっていうのは大げさだったけど、警戒するに越したことはない。


「今おひとりですか?紫音君やこの前の元気なお友達は?」


「あ、今一人です。で、でもあなたには着いていきませんからっ」


身構えるようにググっと拳を握る。


いくら気弱そうに見えても男子なんだから本気を出されたら勝てるわけない。


なので、心は戦闘態勢。


彼はそんな私を見て苦笑いをしたけど、優しい口調でこんなことを言った。

< 136 / 341 >

この作品をシェア

pagetop