溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
だって、お花に罪はないもんね。


私がそう言うと彼はまだ不服そうだったけど、「承知いたしました」と言って、花瓶を探しに教室から出て行こうとした。


「紫音、花なら私がいけてきてあげようか?」


「大丈夫」


晶ちゃんの隣に控えていた薫さんに、声をかけられてほんの少し表情を緩める彼。


「そんな大きな花束をいけられる花瓶なんてあったかな?」


「職員室に行って聞いてみるよ」


「じゃあ、私も一緒にいく。美化委員やってた時の係の先生に聞いたげる」


「おう、わるいな」


薫さんは、普段私や晶ちゃんに対して見せないような顔を紫音には見せることがある。


この時もそう。いつもは自由奔放な晶ちゃんのお目付け役みたいな固い雰囲気なのに今は優しい笑顔。


紫音は薫さんと執事科の同じクラスだから、わりと気心が知れているみたい。

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