溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
「それとも、まだ離れたくありませんか?」


からかうような声に反論する気力もない。


「……」


あまりのスピード感に頭がぼんやりして固まってしまっていた。


私にはあまりに刺激が強すぎたみたい。
 

「ほら、お嬢様しっかりしてください」


「う、うん」


紫音は私の手を引き剥がし、さっとバイクから降りた。


それから私を抱き抱えるようにおろしてくれたんだけど。


「きゃっ」


足の感覚がおかしくてその場にへたり込んでしまった。


たしか、昔ジェットコースターに乗った時もこうなったことがある。


「大丈夫ですか?」


心配そうにそう言ってしゃがみ込んだ彼は私のヘルメットをはずす。


そして、私の乱れた髪を整え出した。


「あー、せっかくセットしたのにな」


残念そうな顔で私の頭を撫で撫でしている。


今朝、初めて紫音に髪を巻いてもらった。

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