溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
後もう少しで届く、そう思った瞬間バランスを崩してしまい焦った。


「ひゃっ」


足がよろけて軌道修正できずにそのまま冷たい床に倒れる寸前、視界がぐるんと回る。


「お嬢様っ」


叫び声と同時に目の前が真っ暗になり、気がつけば逞しい腕に庇うように包み込まれていた。


ドサッ


「……っ」


だけど、そのまま2人一緒に床に倒れ込んでしまった。


彼の上に覆い被さっている私の身体。


え、どうしてこんなことに……。


唇には暖かく柔らかな感触。


しばらくは唇が重なり合っていることの意味すら理解出来なくて呆然とするばかり。


「……っ」


これって、キス?
私、今、紫音とキスをしているんだ。


身体中が痺れるような甘やかな感覚に囚われる。


どうしょう、とてもじゃないけど自分から動けない。


現実のこととは思えなくて、夢の中にいるみたい。
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