溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
淡々と答える彼の表情からは何も感じ取れなかった。


それがなんだか悔しくて悲しくて、頭がぐちゃぐちゃになりそう。


「じゃあ、ほんとのキスって何？紫音はしたことあるの？」


「それは……」


「いつ、誰と？私の知ってる人？」


「お嬢様、なんの話をしてるんですか？」


「……」


呆れたような言い方をされ唇を噛んだ。
　

とんでもない言いがかりをつけてるって自分でも分かってるけど止められない。
　

悪いのは私の方なのに、なんで彼を責めてるのかもわからない。


鼓動がどんどん速くなり胸を押さえながらすがるような気持ちで尋ねた。


「さっきのはキスじゃないの？」


「……違います」


彼は小さくそう言って目を伏せた。


「もういいよっ」　


紫音のバカー、嫌いっ、て悪態が喉まで上がってきたけど必死でこらえてその場から走って逃げだした。


そのまま、自室に戻ると内側から鍵をかけベッドのシーツに顔を埋める。


わかってるの、こんなの全部私のわがままだって。

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