溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
「お嬢様、一旦お部屋にお戻りください」


その時、紫音が慌てたように私のもとに走ってきた。


そして執事服の黒いジャケットを脱ぐと、ふわりと包みこむように羽織らせてくれた。


あ、そっかパジャマ姿でみっともないから隠してくれたんだ。


「あ、ありがとう紫音」


「いえ、お嬢様、ドレスかスーツに着替えてきて下さい」


私にそっと耳打ちしてくる。


「え、でももう無いよ」


「……」


「だって全部みんなにあげちゃったから」


「ああ、そうでした」


困ったようにため息をこぼす彼。


「このままじゃ駄目かな?」


「いえ、正式なプロポーズですから出来ればお嬢様も正装に着替えるべきです」


「そ、そっか」


彼の口からはっきりとプロポーズという言葉がでて確信した。


やっぱり、これってプロポーズの儀式なんだ。


そしてそのことを紫音もちゃんと理解しているみたい。

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