溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
彼はこうなることを知っていたんだ。


「でも」


無意識に彼の着ているワイシャツの袖口をそっとつまむ。


すがるように見上げながらか細い声で尋ねた。


「……どうしたらいい?」


プロポーズなんてどう受け止めたらいいのかわからないよ。


お父様の真意もまだわからないし、こんな急展開に頭が追いつかない。


助けて……紫音。


だって、私はほんの少し前に自分の気持ちに気づいたばかりなんだもん。


「それでは、せめて制服に着替えてください」


「え?」


「急ぎましょう」


「あ、あの」


どうしたらいい?って聞いたのは服装のことなんかじゃないのにな。


でも、彼が誤解しても仕方ない。


しょんぼりと肩を落としていたら、紫音の後ろで待ちくたびれたように天堂さんが口を開いた。


「いいよ、そのままで。それよりどこか場所を準備してくれないかな?」
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