溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
きっと、我が家の落ちぶれっぷりに呆れているか同情しているか。


はぁ、仕方ないことだけどちょっびり恥ずかしい。


「さあ、部屋は準備しました。
用件をどうぞ」


「君はさがっていてくれるかな、彼女と2人きりにしてほしいんだが」


「……あ?」


紫音が鋭く睨むと肩をすくめる天堂さん。


「おいそんな目で睨むなよ。こういう時は気を利かせて欲しいな」


紫音の冷たい対応に天堂さんが怒り出さないかとヒヤヒヤしたけど、今日の彼は冷静だった。


だけど、この場の雰囲気は一触即発の火薬庫みたいに今にも爆発しそう。


またこの前みたいに喧嘩になったら大変。


「紫音、私は大丈夫だから」


本当はそばにいて欲しいけど、彼のためにはこう言うしかない。


作り笑いを浮かべながら握っていた手をゆっくりと離した。

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