溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
2人とも互いへの苛立ちを隠そうともしない。


「紫音、お願い」


「はい」


紫音はしぶしぶ客間の扉の方へ歩き出す。


その後ろ姿を扉が閉まるまでぼんやりと見つめていたら、いきなり視界が真っ白に……。


「ふぇ」


あんまり突然のことで、すぐには頭が回らなかった。


今何が起こっているの?


いつのまにか長身の天堂さんに抱き寄せられていて身動きがとれない。


「……や、離してください」


「ダメ」


耳元に熱い息がかかりビクッとした。


「どうして?」


「僕の前で執事とイチャイチャするからだよ」


「しお……」


「いま、執事を呼んだらどうなるだろうね」


「……え」


「彼はまた我を忘れて暴れてしまうかもしれないな」


「あ」


そうだ、紫音ならきっとそうするに違いない。


私を守るためならたとえ天堂さんでも容赦なく殴りかかりそう。

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