溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
さすがにそれはまずい。


「君の執事は身の程を知らなすぎるからな」


その蔑むような言い方を聞いて、反射的に彼を見上げた。


なんでこの人は、こうも私の執事を嫌うんだろう。


なんとか自力で逃れようと彼の胸のあたりを押して抵抗した。


「……っ」


でも、逞しい胸板はびくともしない。


「落ちついて」


意地悪な笑みを浮かべる彼と目が合う。


悔しい、だけど紫音には気づかれたくない。


「うさぎみたいに従順なのかと思えば、そんな牙をむきそうな顔もするんだね」


「天堂さんは、卑怯です」


キッと彼を睨みあげる。


「卑怯か、どうしてキミは他の女の子のように簡単に靡かないのかな。
でも君のそういうところは魅力的だ」


「は?」


そんな風に言われても馬鹿にされてるようにしか思えないよ。
 

すると、急に力を緩めてくれたので急いで後ろに一歩下がった。


「別に僕は大恋愛がしたいわけじゃないんだ。
君と僕にそんなのは必要ないからね」

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