溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
あと一つ聞いておきたい気がかりがあった。


「天堂さんは、私でいいんですか?」


「僕は君のことは結構気に入ってる。初めて会った時から、結婚相手に相応しいと思っていた」


冷たい人かと思ったら、今度は優しくなだめるような事を言ってくる。


「安心して、君のこと大切にするつもりだから」


結婚して一生彼に支配される私の未来がチラッと頭に浮かんだけど、そんなことは今はどうだってよかった。


さっき紫音が私に着せてくれた黒いジャケットを抱きしめるようにギュッと掴む。


早くこの儀式を終わらせて、紫音と話したい。


なんでもいい、今日の晩御飯のこと、洗濯や掃除のこと、勉強のこと、たわいもない日常の話をして笑いあいたい。


もし結婚のことを報告したら、彼は戸惑うかもしれないけど。


彼ならこれからのことを一緒に考えてくれるはず。


そして、如月家を建て直す手伝いをしてくれる。


これからも一緒に……きっと彼は、どこにも行かないって言ってくれるだろう。

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