溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
「そんな条件、無理です、無理です」


なんでも言う通りにするから、それだけは私から取り上げないで欲しい。


これまでたくさん大切なものを無くしてしまったのに、どうしてまだこの上奪われなきゃいけないの?


もう私にはなんにも残らないよ、


「お嬢様、どうされました?」


取り乱した私の声に気づいて紫音が客間に勢いよく飛び込んできた。


その場にしゃがみ込んだ私は堪えきれず泣き出してしまった。


「お嬢様、お嬢様大丈夫ですか?何があったんですか?」


「うぅ……」


「あの野郎、だだじゃおかない」


彼の目は怒りで燃えている。


そのまま天堂さんを追いかけていこうとするから必死で抱きついた。


「ダメ、行かないで紫音」


「でも、お嬢様をこんなに泣かせて、許せるわけない」


「違うの、今は我慢してお願い」


「お嬢様?」
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