溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
まだ婚約者っていう関係にはちっとも慣れない。


いつのまにか、学校中に私達の婚約が知れ渡っていてクラスの女子ばかりか他のクラスの女子達からも凄く羨ましがられた。


確かに彼は眉目秀麗だし、今の私にはもったいないくらいの家柄の御曹司。


そして、従順にしていれば彼はとても親切にしてくれる。


天堂さんの父親が決めたことだけど、みんなからはラッキーだとか、一発逆転ホームランだとか言われた。


たぶん、他人から見ればそうなんだろう。


けれど、私はまだ上手に笑えなくて……。


その理由は考えないようにしていても、ふとした瞬間に私の心を曇らせた。


「そうだ、執事のことなんだけどさ」


途端にズキンと胸の奥が痛くなり、微かに息も苦しくなる。


「……は……はい」


「いつまでも不在というわけにはいかないから学校にいる時だけでも代わりのものを用意するよ」


「……」
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