溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
「何か困ったことがあれば言って。
なんでもいい。
必要なものや欲しいものも遠慮なく。
僕に言いにくければ沢田にでもいいから」


遠慮がちに言われハッとする。


「あ」


そして、カーッと顔が熱くなる。


おそらく私がお金に困っているだろうからって援助を申し出てくれているようだ。


そんなことまで気を回してもらっているのはありがたいというか情けないというか。


別に悪意があって言っているわけじゃないのはわかっているんだ。


「い、いえ。大丈夫です。
私、欲しいものなんてありません」


欲しいものはただひとつだけ。


それは物ではないけれど、誰も絶対に与えることはできない。


ふと思い出してしまったらもう無理だった。


これ以上平気な顔ができそうに無い。


「す、すみません。私はこれで」

< 259 / 341 >

この作品をシェア

pagetop