溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く

我慢しなきゃって思うのに、作り笑顔が崩壊して泣き出しそうになる。


気づかれる前に逃げたい。


彼の手を振り払って急いで駆け出して、VIPルームから出ていった。


一階の一般客向けのカフェテリアへの階段を降りようとしたら、誰かにぶつかってよろめいてしまう。


「キャッ」


「……ッ」


けれど、ぶつかった相手が私の身体を支えてくれたから階段を転げ落ちずに済んで助かった。


見れば、上下グレーの作業服を着た大柄の男性。


マスクとサングラス、おまけに帽子をかぶっているからなんだか怪しい。


髪は明るめの金髪で、耳にはシルバーのピアス。


いわゆる、不良さん？なのかな。それにしてもチャラそう。


この学園では普段あんまり接することが無いタイプの人。


ううっ、ちょっと怖いかも。


「あ、ありがとうござ」