溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
おっかなびっくりお礼を言い終わる前に、彼は私の横をすり抜けて階段を上がっていってしまった。


む、無視されちゃった。
なんだろう、あの人。


けど、さっき泣きそうな顔を見られちゃったから、恥ずかしいな。


それから、走ってある場所へ向かった。


そこは最近見つけた、秘密の場所。


エクスクルーシブ科の校舎の3階から屋上に向かう非常階段。


そこへ辿り着くと急に力が抜けてホッとする。


ハンカチと手鏡を取り出して、目の端に滲んだ涙を拭いた。


学校にいる時、どうしても涙が出てきてしまったらここにきてこっそり隠れて泣いている。


ここなら誰にも見られないから。


天堂さんとの婚約が決まった私が、グズグズ涙を流していたら、いらぬ誤解を招いてしまう。


それに、これ以上晶ちゃんに心配をかけたくないんだ。

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