溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く

『若葉、泣かないでっ』


取り乱していた私を晶ちゃんは抱きしめてくれて、それから彼女の胸の中でワーワー大声で泣いたんだ。


後から聞いた話だと、紫音は朝早く晶ちゃんに会いにきてこんなお願いをしたらしい。


自分がいなくなったら、私のことを支えてやってほしいと。


私に、一人暮らしは無理だから晶ちゃんちに住まわせてあげて欲しいって。


それは、彼から私宛の手紙にも書いてあった。


封筒に入った現金や、彼名義の通帳やカード、印鑑を置いていくから自由に使って欲しいとも書かれていた。


あと、自分のことは心配しなくてもいいと。


彼の母親と一緒に暮らすので、探さないでくれって。


それらが事務的な文章で書かれてあり、退職届には（一身上の都合）とだけ。


こうして、彼は私の前から忽然と姿を消してしまった。