溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
あれ、でもあのとき
あの廊下には私たちの他には誰もいなかったような気がするんだけどな。


まあいいか。


それよりも気になったことがあって、意識がそちらに向いた。


懐かしくて大好きな香りがする。


「あ、アップルティー?久しぶり」


見れば私の机にはティーセットが置かれてて。


ポットが冷めないようにカバーがかぶせてある。


「あ、そうそう薫ちゃんがいれてくれたらしいよ。さっき運んできてくれたばかりだからまだあったかいはず。
一緒に飲もっ」


「うん」


そういえば、私の大好きなアップルティーを紫音がしょっちゅう淹れてくれたっけ。


美味しかったなぁ。


また、思い出しかけて鼻の奥がツンとなった。


カップに注いで一口飲むと、リンゴの豊潤な味が口いっぱいに広がり身体も心も暖かくなる。


「美味しい」


ちょうどいい甘さで香りも格別。

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